TV視聴「デスバレーの動く石」から(2023.02.16)
先日テレビ放映された動く石に興味を持った。カリフォルニア州とネバダ州に掛かるデスバレー国立公園は、世界で最も暑い場所。記録された世界最高気温は56.7度。谷の中には完全に干上がった湖が点在し、カラカラにひび割れた湖底や多量の塩が露出した湖底の作り出した不思議な世界を眺めて回ることができるという。そのデスバレーの奥地、レーストラック・プラヤ(Racetrack Playa)と呼ばれるところに、なぜか勝手に動く不思議な石がある。しかも、石は一つだけではなく、100kgを超える大きい石までもが規則性なく動いている。「レーストラック・プラヤ」と名付けられたプラヤ=塩類平原(塩湖の跡)にある複数の石に、動いた跡がある。(写真)直径15cmから45cmもあるような大きな石が、完全に水平な平原をどうやって移動しているかは、1940年代からの謎だった。
本当に石が動いたのか。鍵を握っていたのはデスバレーの特殊な気象条件。乾いてひび割れたこの場所は時として、想像もつかない光景に一変する。2013年11月、この場所に10年に一度という大雨が降った。
3日間降り続いた雨の量は60㎜を超えレーストラックは巨大な湖になった。夜間の気温は氷点下にまで落ち込み、夜明けまでに湖の表面には氷が張った。この時、今まで見たことのない光景を目撃したのがカリフォルニア大学教授のリチャードノリス氏。「ちょうどお昼ごろ少し風が吹いた」次の瞬間、目の前の氷が割れはじめた。
割れる音と共に、風に吹かれて氷が動き出し、その後石も動きだしたそうだ。石の周囲の氷が割れ、破片となって重なっていった。風に吹かれて何度も石にぶつかっていた石が動く決定的瞬間がカメラに収められていた。写真をつなぎ合わせてみると幅30㎝ほどの石が動く様子がはっきりと映っていた。動く早さは、1分間に4,5m。手前の石だけが滑るようにゆっくりと動いている。激しい雪や雨がプラヤに巨大な水たまりを作る。その水が一晩のうちに凍結し、朝になって溶け出すと表面の氷が割れて石の周りに何枚もの氷の破片が浮かぶ。強い風が吹くと、氷全体が動いて石をも動かす。これが動く石の仕組みだ。
デスバレー最大の謎を解くカギ、それは、数年に一度しか降らない大量の雪と雨によるものだった。デスバレーは今も昔も常に変化を続けている。まるで魔法のように酷暑から酷寒へと変わる。デスバレー最大のミステリーの動く石、そこには摩訶不思議な自然の力が隠されていた。
写真は2013年12月20日午後3時15分に撮影されたもの。上が北。風速4~5mの一定した微風が北東に向かって吹いて氷を動かし、これによって石の動いた跡が新たに形成されている。色付きの画像は、動きがわかりやすいよう、上書きされたもの。隣り合っている石の移動跡の形状が一致することと、動いていない石も近くにあることがわかる。(2023年2月)
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