「熱海市の土石流災害」2021年7月5日
関東の雨量強度の変化
梅雨末期の集中豪雨による自然災害と言うより集中豪雨災害が近年
私は子どもの頃、山口県の中国山地よりの農山村部で過ごしました。夏になると雷雲の襲来と発達による集中豪雨がたびたび襲います。その激しさは、まさに線状降水帯さながらの南国のスコールを感じさせるものでした。その集中豪雨は1時間あたり100ミリ以上に達していたものと思います。1970年代に東京近郊で生活するようになったころの関東の雨は、なんと軟弱な雨だと感じていました。それから40数年後の関東での雨は軟弱な雨ではなくなり、子どもの頃に山口で感じた降雨強度に匹敵するようになっていることをしばしば体験するようになりました。これは明らかに気候の変動と思われ、ここにも地球の温暖化の現象を認めざるを得ません。
人災か天災か?
近年の梅雨末期における集中豪雨の激しさは目を見張るものがあります。しかし、土砂災害は、何らかの人為が引き金となって土砂移動が始まる場合もあります。洪水と共にあるいは泥流に交じる造林木が流されると言う事は、その地域に造林作業が実施され、人為が加わったことになります。何らかの人為が加わったことにより災害が起こるのか、あるいは過去に例を見ないほどの集中豪雨により災害が起こったのか、この両者の判定は非常に難しいことも有ります。このたびの熱海の土砂災害は地形の急峻な地域に起こりました。土石流の発生元となる地域は別荘等の開発が進められその後数年経ったことにより樹木に覆われていた場所かも知れません。開発行為の際に何らかの土砂の移動があり、災害の引き金になることもあります。災害の誘因が急斜地に集中豪雨が重なって起こったのか、あるいは人為による行為に集中豪雨が災害を引き起こしたのか、これは今後の調査をまたなければなりません。ただここで言えることは、周囲にも同じ傾斜の沢筋はあるのですが、他の沢での被害箇所は確認されていないことです。
土砂移動等の定義
以前、社会か地理で教わった河川の三つの役割とは、土砂の生産、土砂の運搬、土砂の堆積でした。上流域では土砂の生産が絶えず繰り返され、生産された土砂は、豪雨時に河川により運搬されます。運搬された土砂は、どこかへ堆積します。堆積箇所は以前なら海であり、砂浜形成へとつながります。河川の大小により、様々な形態をたどりますが、この生産、運搬、堆積の作用はどこであろうと変わりはありません。どこで起こるのかが問題です。小流域の短い急な河川や沢で起こる場合が、今回の熱海の例でしょう。生産された過程に問題が有りますし、運搬中に住宅地があり、それが押し流され災害になりました。そして堆積は、ほとんどが海にまで到達しましたが、一部が、途中の橋で止められたり道路に堆積しています。山地土砂の大量生産の形態は、「地すべり」、「崩壊(深層と表層)」、「土石流」の3つになります。一般的には、移動速度が遅く、断続的に移動する現象を「地すべり」、移動速度が速く、斜面が崩れ落ちる現象を「崩壊(表層と深層)」、移動速度が速く、水と土や石、砂が混じりあって流下する現象を「土石流」と言います。特に山地崩壊や土石流は梅雨時期の集中豪雨により引き起こされます。
都市型の災害
過去に発生した宅地に絡む災害例としては、2014年8月の広島市の豪雨災害があります。この時の時雨量は100ミリを超え、24時間に累計300ミリ近い豪雨に見舞われ、住宅地の裏山の渓流で発生した土石流が多くの住宅を飲み込み、多数の死者を出しました。被害パターンとしては、表層崩壊らしきものはほとんど見当たらず、土石流によって侵食された渓流が目立つ程度です。ここの森林は大部分が壮齢級の広葉樹林のようです(写真参照)。土壌浸透能を超える豪雨で林内を流れた水は沢に集まり、渓流に集中しその両岸を侵食して立木を巻き込みながら土石流となって山中を駆け下り、一気に林外に放出されました。もともと渓流の下部は扇状地で、そこを宅地開発していたのですから、被災して当然と言えます。この災害に関して行政責任をあえて問うとすれば、扇状地という危険箇所に宅地造成を許可し建築許可を与えたものになると思います。
災害は忘れない頃にやってくる
この度の熱海の土石流災害のはっきりした真相は究明されていません。急傾斜地形に宅地が立ち並び、沢沿いの住宅が被災したのは上述の広島市の豪雨災害に似たケースと言えます。広島市の場合は、下流から上流へ宅地開発が迫ってきたのに対して、熱海市伊豆山地域では、
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2021年6月19日開設(2023年2月更新)
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