残雪の至仏山とミズバショウ(2021年6月10日)
 残雪の至仏山とミズバショウ(2021年6月10日)

 「久しぶりの尾瀬」2021年6月13日

 

 2015年頃に学部のフィールド実習を担当した際に学生を引率して、毎年のように尾瀬を訪れていた。何れの実習も、夏休み最終週の9月初旬に開催されていたので、尾瀬のミズバショウの時期は過ぎていた。今回はコロナ禍で多少気は引けるが誘惑には勝てず、中野氏の誘いもあり、6月の尾瀬を歩くことにした。

6月10日(金)1日目行程

5:00:自宅を車でスタート

6:00:東金町駅付近で中野氏をピックアップ 関越道経由

8:00:関越沼田インター

9:00:尾瀬戸倉駐車場 現地バス利用

9:40:鳩待峠着

9:50:尾瀬へ入山開始

10:50:山の鼻着 小休止・尾瀬ヶ原散策 4時間弱

14:40:鳩待峠へ向け山の鼻出発 

16:00:鳩待峠帰着 

16:40:尾瀬戸倉駐車場着 17:00:同駐車場出発  

18:00:宿泊先の日光グランドホテル樹林着 

中野氏

 中野氏は日大の林学科の同窓生である。若い時期に技術士資格を取得し、民間の緑化環境系のコンサルタント会社で活躍され、林道のり面の緑化工技術はもとより、植物や森林生態系に関する幅広い専門家だ。会社退職後も関連する学会の理事をはじめ環境コンサル系諸団体の理事長に加え、政府機関の委員会の委員長などを務めるまさに環境系技術者の重鎮だ。今回の尾瀬行き同行の際に、歩きながら森林生態系や生物多様性など多くの会話の中から、気になった話を紹介しよう。 

中野氏の自然への思い

 外来種は、在来種を駆逐し、生態系のバランスを崩すので、外来種の駆除に力を入れている。特定外来生物とは、「生態系、人の生命、身体、農林水産業に被害を及ぼしたり及ぼすおそれのある外来生物(侵略的外来種)の中から、規制・防除の対象とするものを『特定外来生物』として指定する。その指定は、学者などの意見を聞いたうえで、主務大臣である環境大臣によって行われ、政令(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令)に定められる。特定外来生物は、生存しているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれる。」で、第一次指定種から第十四次指定種まである。植物では第一次指定種に、ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサ、ミズヒマワリの3種、第二次指定種には、アメリカオオアカウキクサ、オオフサモ、アレチウリ、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、など9種が主な種らしい(ウィキペディアより)。このリストにはないが、古くは明治時代ごろより輸入されていた、オーチャードグラスや、昭和20年代に輸入されたイタリアングラスやウィーピングラブグラスは、我が国の牧草として固有種に近い扱いを受けていると思われる。学生時代に荻原教授よりのり面緑化草本植物代表はウィーピングラブグラスであると教わったことを思い出す。最近の外来種の代表格としては、オオハンゴンソウや外来の水草の脅威が報道で取り上げられ、前者は北海道のいたるところに黄色い花をつけ、在来種を駆逐する心配が叫ばれる。一方ではこれらの外来種については別の見方もあるのをご存じだろうか。河川改修工事により、3面張り河川は、昔ながらの両岸は堰堤に置き換えられた。自然の景観は損ねられ、そこへ上流から洪水時に流れ込んだ外来種の種子がたどり着き、外来種に侵されるエリアが出現する。すなわち、我が国の原風景とも言うべき小川のせせらぎの固有種を駆逐した改修工事にこそ生態が攪乱される現状に気付くべきである。上流ののり面緑化種の外来種使用禁止を行う前に、河川改修工事そのものを議論することの方がより重要のように思える。在来種が外来種侵入に追いやられる心配や種の交雑での生態系への影響らしいが、林道開設時ののり面の早期植物での被覆に関して、外来種はダメ、在来種の導入をと謡われるが、早期ののり面被覆にはウィーピングラブグラスなどの早い時期に導入された外来種を使用し、のり面の安定後に木本植物による被覆にたよる先方が望ましい。のり面緑化に在来種の使用はすべてダメなどは、現場を知らない学者委員の発言にとらわれすぎていると言わざるを得ない。そんな話をしながら、鳩待峠から尾瀬の山の鼻へそして尾瀬ヶ原の高層湿原を歩いた。

尾瀬を歩いて

 尾瀬は、2000mを超える山々で囲まれた盆地状の地形である。盆地の西側には標高2400mの隆起してできた至仏山が、また反対の東側には燧ヶ岳があり、この火山の噴火により只見川や沼尻川が堰き止められて、尾瀬沼や尾瀬ヶ原の高層湿原が誕生したと言われている。高層湿原の尾瀬ヶ原は堰き止められた沼に周囲からの土砂が流れ込み、水はけの悪い盆地は湿原となった。(尾瀬林業のホームページより一部引用)尾瀬ヶ原では、ミズバショウの他に多くの湿原高山植物を鑑賞できた。確認できた植物としては、シラネアオイ、ヒメシャクナゲ、ワタスゲ、コケモモ、コバイケソウ、シナノキンバイ、タテヤマリンドウ、レンゲツツジ、ムラサキヤシオツツジ、他にも数種類の花の名前を教わったが、思い出せない。年のせいなのであろうか情けない。午前9時50分に鳩待峠を出発し、午後4時前までの6時間で、距離で13㎞、高低差約200mを歩数25000歩で歩いた。平均時速に換算すると2.2㎞/h程度、両足のアキレス腱断裂にしては良く歩いたものだ。鳩待峠からは尾瀬戸倉駐車場まで地元のバスで約20分、尾瀬戸倉から愛車に乗り換え、金精峠を超え日光エリアへ入った。山の緑が尾瀬方面に比べて幾分淡い緑であるように感じた。そういえば尾瀬側の平均標高は1200m程度に対して奥日光湯の子の標高は1400m程度になるのだろうか、標高の違いなのであろう。午後5時過ぎには本日のお宿の「日光グランドホテル ほのかな樹林」へ到着した。またこのホテルが素晴らしい。リーズナブルで、立派な硫黄温泉の源泉かけ流しでゆっくり温まり疲れを癒すことができた。

この日のLINEに次のように発信した。 

 二日間でしたが、二つの国立公園を歩きました。良かったことは豊富な専門知識に基づく的確な解説を聞けたこと。まだ山道を少しだけど「歩けることを確認できたこと、中野ファミリーの可愛いお孫さんを抱っこできたこと、硫黄温泉でゆっくりできたこと、湯ノ湖でルアーフィッシングができたこと、そして綺麗な草花を手に取るように見ることができ、いっぱい楽しめたことです。中野さん、今回は有難う。また誘ってください。皆さん来年は一緒に行きましょう。(2021年6月13日)